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白の記憶No,24

 小学生のころ、真空管式のラジオ作りに夢中になった。初歩のラジオ、ラジオの制作といった、ラジオ雑誌の実体配線図を頼りに、シャーシーにバリコンや真空管ソケットを付けた裏面に、半田ごてでコンデンサーや抵抗を取り付けるのだが、実体配線図に載ってない部分があったりすることも、配線図を見て確かめるのだがよくわからない時の方が多い。そんなときは、ひたすら想像力を働かせ実体配線図の裏側を想像してみるのである。この線が斜め上に向っている、こっちは下の方だな等と、一通り配線が終わって、真空管をソケットに差し込んで、さあてと、電源スイッチをいれてみる。大抵初めは、うんともすんともいわない。これから悪戦苦闘の長い戦いが始まるのである。実体配線図の目視確認できるところを除いて、怪しいところの配線を1本ずつ付け替えてはコンセントを差し込んでみる。何度も配線を変えては電源を入れるのを繰り返す。ハンダやペーストの溶けるにおい、時々こてやハンダに触れて火傷をするなんてことはしょっちゅうのこと。手は汗でびっしょり、その手でシャーシーやどこかに触れてしまうものだから感電することもある。もっとすごいのは、電源を入れたらしばらくして煙のようなものが出てきて、焦げ臭いにおいがしてきたことだ。そんな試行錯誤の末、やっとのことでスピーカーから出てきた音は、「ブーーーー」。「やったぞ、ここまで来たら何とかなる」バリコンを回してみるが音はそのままブー。ここからは、真空管のソケットへのさし方だ。一本ずつ上の方をつまむようにして少し揺らすように動かしてみる。5MK9、6AR5、6BD6、6BE6,6A‥と順に試してみる。真空管の足がまっすぐばかりの時は、何本か外側に少し曲げてみた、要するに接触がよくなると思ったからだ。見事に的中した!何本目かのときに、ブーとなっていた音が、急に静かになり、ザザッという音に変わったのだ。その真空管を集中的に試す、足を曲げたり、のばしたり、きつめになるように差し込む。すると、ピー――シャーーーーー!という音。ここだ!もう一度バリコンのつまみををゆっくり回していく、ピーポージャーの後に何やら人の話し声のような音が小さく聞こえてきた。ヤッター今度こそやったのだ。そしてさらにつまみを回していくと,・・♬・♫・セイ ジョージガール ♬・♫・♫♪ジョージガールと今まで聞いたこともない音楽が流れてきた。すごい!なんだこの曲は‼